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青本の記載を再現できないという口述受験生の皆さんへ

 ご無沙汰しています。最近生活習慣を見直していた関係でblogの更新を止めていましたが、生活習慣についての方針が概ね定まったので今回久しぶりに更新します。

 昨日所属会派主催の口述練習会が開催され、そこに講師として参加した同僚が、「青本の記載を再現できない受験生が多いですね」と言っていた。そういえば他の会派で口述講師をしていた(複数の)人も同様の感想を述べていた。
 
 これは問われているテーマの趣旨を理解できていないからである。なぜなら試験中に参照可能な法文集には条文の文言が記載されているのだから、青本の記載の再現が問題になるのは、法文集には記載されていない立法趣旨に関する事項だからである。

 実は私が9月に講師をしており、そのとき感じたことは、「再現できない」というよりは、「趣旨や制度の本質を理解できていない」と思った。弁理士試験の受験生は、記憶力抜群の子供ではなく、記憶力の衰えを受験勉強を通じて自覚せざるを得ない年齢の人がほとんどである。そんな人たちが、子供の暗唱大会のように青本の記載の暗記することは無理だし、無意味である。

ではどうすればよいのか?

 そのためには問われるテーマを理解することである。具体的には、そのテーマに関する要件を押え(これは短答や論文で既に身に付いていると思います)、その要件がなぜ課されているのかを自分なりに考えながら青本を読むのである。そうすると、「そうだよね」と思う箇所と「へぇ、そうなんだ!」と思う箇所があるはずである。そのときに後者の記載を精読して立法趣旨を理解するのである。最近の口述試験は、種々の工夫によってテーマを減らしているからマニアックなテーマが聞かれることはまずない。そうするとある程度重要なテーマを選び、自分の苦手を抽出した上で上記のことを行うことは、今からでも可能だと思う。是非取り組んで欲しい。

最後に手前味噌だが、私が受験生だった頃の口述試験の再現のリンクを紹介する。ここでも青本の記載の再現がさりげなく求められているが、重要なことは、「この受験生、聞かれているテーマについて理解している」と思わせるキーワードを発言することである。

特許・実用新案法
http://naosuzukake.blog90.fc2.com/blog-entry-7.html

意匠法
http://naosuzukake.blog90.fc2.com/blog-entry-15.html

商標法
http://naosuzukake.blog90.fc2.com/blog-entry-16.html

今年口述試験を受験される皆さんのご健闘を祈念する。
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意匠の利用について-cof先生に答える(2)

 これは題名通り前回の続きである。
 先の記事では、ある登録意匠を利用する他の意匠の実施は意匠法23条違反の意匠権侵害ではないという主張を展開した。
 しかしこのような登録意匠を利用する他の意匠の実施が許されてはならない(意匠権侵害とされるべき)であるとは私も異論はない。なぜなら一種の模倣であるからである。では23条違反の意匠権侵害ではないのならどのようして、そのような意匠を意匠権侵害とすべきなのか? 今回はそれについて学習机事件を紹介しながら主張、検討する。

学習机事件は、以下のように判示する。
「意匠法第二六条は登録意匠相互間の利用関係について規定するが、意匠の利用関係のみについていえば、他の登録意匠を利用する意匠はそれ自体必ずしも意匠登録を受けている意匠である必要はなく、意匠の利用関係は登録意匠と未登録意匠との間にも成立するものであり、他人の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用した未登録意匠の実施が、他人の当該意匠権の侵害を構成することは勿論である。」

 これは26条を論理解釈していることに注意して欲しい。その論理解釈を行うために、上記引用個所は、意匠の利用態様にのみ注目し、意匠の利用が利用者/被利用者の権利関係に関係なく成立すると判示している。
 具体的には、

利用A:ある登録意匠と、その登録意匠を利用する未登録意匠との関係
利用B:ある登録意匠と、その登録意匠を利用する他の登録意匠との関係

 とすると、学習机事件の判決は、利用A,Bともに意匠権侵害と判示している。意匠法26条を文理解釈すると利用Aのみが該当することにながが、学習机事件では、論理解釈(拡張解釈)によって、利用Bも該当すると判示していることに注意して欲しい。

 先に引用した箇所に続いて、学習机事件の判決は、利用Aの場合であれば、自己の登録意匠の実施に該当するという抗弁の制限について以下のように判示している。

「ところが、意匠権者は登録意匠及びこれに類似する意匠の実施を有する権利を専有する(意匠法第二三条)ところから、他人の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用した意匠が偶々自己の登録意匠又はこれに類似する意匠である場合には、利用された側の意匠権者の独占的排他権と利用する側の意匠権者の実施権とが衝突するため、両者の関係を調整する必要がある。意匠法第二六条はかかる場合双方の登録意匠の出願の先後関係により先願の権利を優先せしめ、後願の登録意匠又はこれに類似する意匠が先願の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用するものであるときは、後願にかかる意匠権の実施権をもつて先願にかかる意匠権の排他権に対抗しえないこととしたのである。」

 特に「偶々」という語句に注意して欲しい。これはまさに利用Aも利用Bも意匠権侵害を構成し、偶然その事件が利用Aに該当する場合には、先願優位の原則に従って、後願意匠権者の実施権を制限するということである。

以上より、上記判示事項をまとめると以下のようになります。

1.利用Aの取り扱い
 ある登録意匠に類似していないので23条違反ではないが、利用関係が成立しているので意匠権侵害を構成する。利用する意匠を実施する者はその利用する意匠を実施する権原を有するが、それは26条の規定により制限される。

2.利用Bの取り扱い
 ある登録意匠に類似していないので23条違反ではないが、利用関係が成立しているので意匠権侵害を構成する。如何なる正当権原もないので抗弁の余地もない。

 つまり利用Bの場合、文理解釈に基づいて26条が権利調整規定としての意味<しか>持たないとするのであれば利用Bは非侵害になる(このとき、ある登録意匠と、その登録意匠とが全体観察によって類否判断されていることに留意)。そして利用Bも23条で処理しようとすると、分離観察に頼るしかないことになるが、意匠の類否における分離観察については、司法は一貫して否定している(前回の記事参照のこと)。そして学習机事件は、分離観察は意匠の利用関係の成否を検討する上では妥当として以下のように判示している。

「被告は、被告意匠は書架付学習机として一体不可分の意匠であるから、机部分の意匠と書架部分の意匠とが各独立して存在するものではなく、机部分の意匠を全体から分離して意匠の利用の有無を論ずることは意匠の本質を誤るものであつて許されないと主張する。しかし、右主張は意匠の類否の問題と意匠の利用の問題とを混同するものというべきである。すなわち、意匠は、その全体から一個の美感が生ずるものであつて、意匠の類否は結局類似した美感を与えるか否かにかかつているから、類否の判断にあたつては意匠の全体を相互に比較すべきことはいうまでもない。これに反して、意匠の利用関係の有無は、双方の意匠が全体観察においては非類似であることを承認しつつ、一方の意匠中に他の登録意匠の全部が包含されているか否かを問題とするものであるから、その判断は、一個の意匠を構成する一部が登録意匠全部と同一又は類似であるかを検討することによつてなされるべきことはむしろ当然である。」

 以上をまとめると、以下の通り。
1.ある登録意匠を利用する意匠の実施は、その登録意匠と、その利用する意匠とが、全体観察による類否判断の結果、非類似と判断されるので、23条違反の意匠権侵害が成立しない
2.意匠法26条は、拡張解釈されることによって、(i)利用する意匠の登録の有無に関係なく、登録意匠を利用する意匠の実施が意匠権侵害を構成する、(ii)利用する意匠が登録意匠である場合には、先願優位の原則に従って、「自己の登録意匠の実施(又はその意匠権に基づく実施権に基づく実施)」を制限する旨規定している。

意匠の利用について-cof先生に答える(1)

間があきましたが、cof先生(以降、先生と略記)のコメントに対する返答です。長いので2回に分けます。

まずは先生のコメントの一部を引用します。

>つまり意匠法23条違反の意匠権侵害が成立しないことを述べています。

これは誤りであると考えます。
意匠法23条は、「意匠権者は業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する」ことを規定しているわけですが、非類似意匠の実施であったとしても、それが登録意匠を利用する関係にあれば、登録意匠の実施に該当するわけ(学習机事件、利用関係の定義参照)ですから、23条違反の意匠権侵害が成立します。すなわち、全体意匠が非類似であったからと言って、すぐさま23条違反の意匠権侵害が否定されるわけではありません。



まず「意匠の利用」の定義から23条違反の意匠権侵害という結論を引き出しているので、「意匠の利用」についての判示事項を検討することから始めます。

学習机事件は「意匠の利用」について以下のように判示しています。
「意匠の利用とは、ある意匠が(1)その構成要素中に他の登録意匠又はこれに類似する意匠の全部を、その特徴を破壊することなく、他の構成要素と区別しうる態様において包含し、この部分他の構成要素との結合により(2)全体としては他の登録意匠とは非類似の一個の意匠をなしているが、この意匠を実施すると必然的に他の登録意匠を実施する関係にある場合をいうものと解するのが相当である。」

赤の意匠:完成品
緑の意匠:部品(=構成要素)

 これらは相対的な関係であり、使用態様によって変化する。たとえば、ホームセンターで売っているネジは完成品だが、扇風機に使われているネジは部品である。学習机事件では、本件登録意匠「机」が緑の意匠であり、被告意匠の「学習机」が赤の意匠であり、被告意匠の机部分が青の構成要素である。

上記(1),(2)から以下のことが導かれる。
(1)完成品と登録意匠は非類似である。
(2)構成要素と登録意匠は類似(ただし分離観察に基づいて当該構成要素の物品を認定している)。

 上記を考慮して先生が本件が23条違反と解釈するということは、「他の登録意匠」と、「ある意匠」のある「構成要素」とを対比した上で、両者が類似すると判断していると推測される。この推測は、同先生の「この意匠を実施すると必然的に他の登録意匠を実施する」というところに23条違反の意匠権侵害の根拠を見出しているコメントからも妥当であると考える。

 そしてこのような考え方は、直感的には、特許における利用発明のアナロジーによって少なくない人たちに支持されているのではないかと想像する(たとえばH14同業者センセイの見解からも予想される)。

そこで続いて特許における利用関係と、意匠における利用関係とを比較検討する。

 特許法68条は、特許権者が自己の特許発明の実施を専有する旨規定している。そして特許法70条1項は、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる旨規定している。
 たとえば、甲が、請求項1「形状αを有する自転車用タイヤ」の特許権者であるとする。乙が、「形状αを有するタイヤと形状βを有する本体部から構成される自転車」を実施する場合、乙は、甲の特許権を侵害する。なぜなら乙が実施する自転車は、「形状αを有する自転車用タイヤ」を含むからである。

 一方意匠法23条は、意匠権者が自己の登録意匠又はそれに類似する意匠の実施を専有する旨規定している。そして意匠法24条1項は、登録意匠の類似範囲は、願書の記載と図面等に基づいて定められる旨規定している。願書の記載のうち登録意匠の類似範囲に影響するものは物品と意匠の説明であり、図面からは形状が特定される。よって意匠の類似範囲は、「物品」と「形状、模様、若しくは色彩、又はこれらの結合(以降、形態と略記)」に基づく。
 たとえば、甲が、物品が「自転車用タイヤ」で形状αの意匠権者であるとする。乙が、「形状αのタイヤと形状βを有する本体部から構成される自転車」を実施する場合、物品「自転車用タイヤ」と「自転車」は非類似であるが、その自転車の一部には「自転車用タイヤ」が含まれ、その形状は同一である。

 先生は、乙が、自転車の意匠を実施することで、必然的に甲の登録意匠を実施するのだから、乙の実施は甲の意匠権を侵害すると考えていると思われる。

 この主張は特許法とのアナロジーを妥当とすると一見もっともなように思える。しかしこの主張が正当化されるにはある前提があることを指摘しておきたい。

 それは、「意匠を分離して2つ以上の物品と形態を認定した上で類否観察することが妥当」であるということである。

しかしその分離観察による類否判断が妥当ではないことについて司法の判断は一貫しています。

学習机事件
「意匠は、その全体から一個の美感が生ずるものであつて、意匠の類否は結局類似した美感を与えるか否かにかかつているから、類否の判断にあたつては意匠の全体を相互に比較すべきことはいうまでもない。」

減速機付きモーター事件
「原告は、本件登録意匠との類否判断の対象となるべき製品は、被告製品の減速機部分であると主張するが,前記認定のとおり、減速機部分は,ねじでモーター部分と固定されており、減速機部分は減速機付きモーターの一構成部分にすぎないというべきであるから、被告製品の減速機部分のみを切り離して本件登録意匠との類否判断の対象とすることはできないというべきである(もっとも、利用関係の判断に当たっては、減速機部分のみを類否判断の対象にすることがあり得るが、利用関係も成立しないことは前述のとおりである。)。」

建物壁用装飾板事件
「意匠の類似、非類似の判断に際しては、対象となる意匠は各部分各要素を総合した全体的な統一体として評価されるのであり、意匠から周知または公知の部分を除外して残った部分のみを評価の対象とするのではない。」

 また特許庁の意匠審査基準も上記判示に沿ったものです。
(ア)対比する両意匠の意匠に係る物品の認定及び類否判断
(イ)対比する両意匠の形態の認定
(ウ)形態の共通点及び差異点の認定
(エ)形態の共通点及び差異点の個別評価
(オ)意匠全体としての類否判断

 類否判断においては要部を認定する際に部分観察が行われますが、最終的には意匠全体として類否は判断されます。

以上をまとめます。
1.意匠法23条違反の意匠権侵害を主張するためには登録意匠とイ号意匠との全体対比して類否判断しなくてはならない。分離観察は認められない
2.意匠の類否判断においては、全体観察に基づいて、「物品」と「形態」に注目して行われる
3.登録意匠を利用する意匠は、その利用する意匠と登録意匠とは、「物品」も非類似であり、「形態」も、他の構成要素との結合により非類似になっている。よって23条違反の意匠権侵害を構成しない。

次回は登録意匠を利用する意匠が26条の意匠権侵害を構成することについて説明する。

平成25年弁理士論文式試験商標法補足

職場の商標担当弁理士(平成21年合格の女性)と同僚(平成24年合格の男性)に今回の論文試験のことを尋ねたら、昨日書いた私の商標法の回答が適切ではないと思った。彼女は自身の実務経験に基づいたアドバイスをくれ、彼は実務修習で学んだことを教えてくれた。

そこで今回は彼/彼女らのアドバイスに基づいて別回答(前回と異なる箇所のみ)を考えたのでここに公開する。2人には本当に感謝している。そして自分ももっと研鑽を積まなければならないと痛感した。

では回答をどうぞ。

3.について

1.指定役務「牛丼の提供」について

(2)4条1項11号の拒絶理由
 丙の登録商標は図形とゴシック体で書かれた「ABC牛丼」との結合商標である。丙の登録商標と本件商標とは外観こそ異なるが、称呼と観念が同一であり、指定商品が同一であるため、本号に該当するように思われる。
 しかし「ABC牛丼」という文字部分は、本来ならば地名と商品(役務)からなる所謂記述的商標として3条1項3号で拒絶されるべきである。それが商標登録を受け、かつ無効理由もないということは、文字部分と図形とが一体となることで識別力を発揮していると考えられる。そうすると、甲の商標登録出願と丙の登録商標との類否判断においては、丙の登録商標の結合商標として生じる外観、称呼、観念が比較の対象とならなければならない。
 そこで上記に基づいて丙の登録商標の識別力について具体的に検討すると、丙の登録商標のうち文字部分は字体こそゴシック体だが、文字は「ABC牛丼」であり、特に特徴あるものではなく、主として図形部分が識別力に寄与していると判断するのが相当である。
 以上を考慮すると、甲の地域団体商標登録出願に係る商標と丙の登録商標とは、非類似と考える余地が十分にある。
 よって甲の地域団体商標登録出願は、指定役務を「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼の提供」と補正して、甲の地域団体商標登録出願と丙の登録商標とが非類似であると主張することによって商標登録を受けられる可能性がある。

2.指定商品「牛丼」について

(2)4条1項15号の拒絶理由
 本号の「混同」とは、他人の業務に係るものと誤信させる場合(狭義の混同)だけではなく、他人と法律的、経済的、又は組織的に関係があると誤信される場合(広義の混同)を含むと解される。
 本問においては、指定商品/役務こそ非類似だが、商標が類似していることで、甲と丙との間で広義の混同が生じる恐れがあるため、本号に該当する。
 本号の拒絶理由は、丙が甲に入会することでも解消される。なぜなら丙が甲に入会すれば、両者の間には関係があるのだから、広義の混同はそもそも生じないからである。しかも丙の登録商標は指定商品「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼」には使用できないが、丙は甲への入会により指定商品「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼」について地域団体商標「ABC牛丼」の通常使用権を得るので、丙が甲に入会する可能性は高い。また団体甲は、「ABC牛丼」の提供及び販売促進のための団体であるため、飲食店が構成員であると考えられるので、同じABC地域の飲食店である丙が入ることは可能である(逆に可能でなければ甲は、7条の2第1項柱書きの主体的要件を充足しないことになる)。
 丙が甲への入会を拒否した場合には、「広義の混同を生じさせるには広く知られていることが必要だが、丙は混同を生じさせるほど広く知られていない」と意見書で対応することができる。

従って、指定商品「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼 」とする甲の地域団体商標「ABC牛丼」は、丙が甲に入会することによって、又は、審査官に丙の登録商標は広義の混同を生じさせるほど広く知られていないと認定させることによって商標登録を受けられる可能性がある。

以上。

平成25年弁理士論文式試験商標法を解いてみた

続いて商標法を解いてみた。なお問題Iと問題IIの1は省略する。各自青本等を参照されたし。

2.について
乙は以下の事項について確認すべきである。

(1)甲が事業協同組合その他の特別の法律により設立された組合であるか否か(7条の2第1項柱書き)
 併せて甲が、(i)法人格を有する、(ii)当該特別の法律において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものか否かも確認する(同カッコ書き)。

(2)甲の構成員が「ABC牛丼」使用するのか(7条の2第1項柱書き)
 本問においては団体甲は、「ABC牛丼」の提供及び販売促進のための団体であるため、飲食店が構成員であると考えられるので、この要件を充足していると考えられる。

(3)指定商品/役務と地域ABCとの間に密接な関連があるのか否か(7条の2第2項)
 本問では、甲の構成員である飲食店は、ABC産の牛肉を原料とする牛丼を提供しているので、この要件を満たすことが可能と解される。

(4)「ABC牛丼」がABCの近隣市町村にもその名が知られているのか否か(7条の2第1項柱書き)

3.について

1.指定役務「牛丼の提供」について
(1)4条1項16号の拒絶理由
 ABC産以外の牛肉を原材料とする牛丼の提供に対して当該商標が用いられる場合、あたかもABC産であるかのような品質誤認を招くため。
 本号の拒絶理由は、指定商品を「牛丼の提供」から「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼の提供」と補正する(68条の40)により解消される。
(2)4条1項11号の拒絶理由
 丙の登録商標と本件商標とは称呼と観念が同一であり、指定商品が同一であるため、本号に該当する。
 本号の拒絶理由は、上記補正を行っても、指定商品は類似するので、解消されない。丙の登録商標に無効理由もないので、丙の登録商標が存在する限りこの拒絶理由は解消されない。

よって指定役務「牛丼の提供」とする甲の地域団体商標「ABC牛丼」は商標登録を受けられない。
仮に指定役務を「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼の提供」と補正しても商標登録を受けられない。


2.指定商品「牛丼」について
(1)4条1項16号の拒絶理由
 ABC産以外の牛肉を原材料とする牛丼に対して当該商標が用いられる場合、あたかもABC産であるかのような品質誤認を招くため。
 本号の拒絶理由は、指定商品を「牛丼」から「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼」と補正する(68条の40)により解消される。
(2)4条1項15号の拒絶理由
 本号の「混同」とは、他人の業務に係るものと誤信させる場合(狭義の混同)だけではなく、他人と法律的、経済的、又は組織的に関係があると誤信される場合(広義の混同)を含むと解される。
 本問においては、指定商品/役務こそ非類似だが、商標が類似していることで、甲と丙との間で広義の混同が生じる恐れがあるため、本号に該当する。
 本号の拒絶理由は、丙が甲に入会することで解消される。なぜなら丙が甲に入会すれば、両者の間には関係があるのだから、広義の混同はそもそも生じないからである。
 また団体甲は、「ABC牛丼」の提供及び販売促進のための団体であるため、飲食店が構成員であると考えられるので、同じABC地域の飲食店である丙が入ることは可能である(逆に可能でなければ甲は、7条の2第1項柱書きの主体的要件を充足しないことになる)。
 なお丙は、自己の商標権に基づいて指定商品「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼 」について自己の登録商標を使用することができないが、丙が甲に入会すればそれが可能となるので、丙が入会する可能性は高いと考えられる。

従って、指定商品「ABC産の牛肉を原材料とする牛丼 」とする甲の地域団体商標「ABC牛丼」は、丙が甲に入会することによって商標登録を受けられる。

以上。
プロフィール

なおすずかけ(「すずかけ国際特許事務所」とは一切関係ありません)

Author:なおすずかけ(「すずかけ国際特許事務所」とは一切関係ありません)
東京都在住のアラフォーです。
2009年弁理士試験に最終合格し、2010年4月に弁理士登録しました。現在東京都内の特許事務所に勤務しています。
家族構成は、妻と娘2人(小学4年生と1年生)。
趣味は囲碁(WINGで3k。一般的な日本の碁会所だと4段くらい?)

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