弁理士になって何が変わった?-ある変な勤務弁理士の雑感-
同期合格&大学の後輩である莫迦凡堂氏が、「思い止まるなら、始める前に - これから弁理士試験へのチャレンジを検討されている方へ -」で弁理士になったことの不利益と、「利益 -弁理士になって良かった事についての個人的見解-」という記事で、弁理士になったことの利点をそれぞれ書いている。
私としてはこのような氏の感想を否定する気は全くなく、「あぁ、そうだったんだね、お気の毒に」と思うだけである。ただ上記の記事を読んでいる、特に受験生の人たちには、「この記事は813人いる平成21年弁理士試験最終合格者の1人の感想に過ぎないんだよ」と声を大にして言いたくもなる。それは、単なるお節介なのか、自分なりに誇りを持って今の仕事をしているのかはわからないが。
というわけで、今回は、当初連休中のことを書こうと思ったが、やめて「弁理士になって変わったこと」について徒然に書くことにした。
以前別な特許事務所に勤務する同期合格の方に、Facebook上で「弁理士になって何が変わりましたか?」と聞かれ、私は以下のように答えた。
1.給料が増えた
2.メルアドと名刺が変わった
3.審判であれば(代理権がなくても)電話応対できるようになった
4.面倒な仕事が増えた
1については、現在の職場では、弁理士資格手当としていくらかもらえることになっている。残業代はなくなったが、その代わりにこれまでの残業実績に基づく超過勤務手当がつくので、合計としては給料が上がった。具体的な額についてここでは書かないが、この増分が、弁理士試験突破の動機付けとなるかは、人によるだろう。
2はまぁ些末なこと。名刺に「弁理士」という肩書きがつき、職場のメルアドには、外国人にもわかるように弁理士であることがわかるようになった。ただ対外的にも認められるようになったと実感できた。あとついでに書くと現在の職場の受付には、弁理士の名前が刻まれた銀プレートが掲げられていて、ここに私の名前が追加されたときには、「おぉ」と思った。
3もどうでもいいことだと思う人がいるかもしれない。ただ特許庁審査官/審判官との技術面談は弁理士の専権業務である(弁理士法4条1項、75条)。非公式なやり取りであるとはいえ審尋回答書の内容に関して審判長から直接問い合わせの電話が来て、それに応対したときに「一人前になった」と思ったものである。
4は、具体的には、中途受任の中間処理(しかも拒絶査定+補正却下、審尋の段階)が激増した。想像していただきたいが、自分で発明者と面談したわけでもない事件で、拒絶査定不服審判(121条)を請求したいから審判請求書(131条)を作れと言われたらどうするだろうか? i)まず出願時の明細書を読んで発明内容を理解し、ii)その後拒絶理由通知を読んでなぜ本出願が拒絶されたのかを理解し、iii)次に前の代理人がどのような手続を行ったのかを理解し、iv)最後にその手続ではなぜ拒絶理由が解消されなかったのかを理解しなければならない。ここまでやってようやく審判請求書の論点を抽出できるのである。
しかも(これは愚痴だが)中間処理は通常件数毎の売り上げで要した時間で費用請求できない。そうすると上記1~4をできるだけ速く行う必要がある。しかし速くても重要な論点を落としたり(項目落ち)しては「代理人失格」である。といったわけで速く処理しなければならないが、しっかり検討もしなくてはならないというわけで、弁理士の腕の見せ所といえばそうかもしれないが、結構キツい。
あと上記返答の後、いくつか気づいたことがあったのでそれについても今回書いておく。
5.(今の職場を追われても)「どうにかなる」と思えるようになった
6.アルバイトできるようになった
7.交友関係が広がった
5は実は自分にとって一番重要。今の職場で働き続けるつもりにしても、「今の職場辞めたら路頭に迷う」と思って働くのと「今の職場を辞めてもどうにかなる」と思って働くのとでは、精神的な負担がまるで違う。このような精神的なゆとりを得て働けるようになったことは(実際の仕事がキツくても)一番大きい。
6もそれほど重要なことではないが、交際費(という名の飲み代)を捻出する上では非常に重要。ちなみにこれまでのアルバイト代で受験機関に投資したお金は回収できた。
7は、弁理士同士わかり合える部分が多いようで、わりとすぐに打ち解けることができる。ただ弁理士はお金持っている人が多いですから交際費は結構かかるかも(実際私はときどき飲み会の誘いを断っている)。
とまぁこんな感じで「弁理士登録後」のことを酔った勢いに任せて色々書いてみた。受験生の皆さんの参考になればと思います。
私としてはこのような氏の感想を否定する気は全くなく、「あぁ、そうだったんだね、お気の毒に」と思うだけである。ただ上記の記事を読んでいる、特に受験生の人たちには、「この記事は813人いる平成21年弁理士試験最終合格者の1人の感想に過ぎないんだよ」と声を大にして言いたくもなる。それは、単なるお節介なのか、自分なりに誇りを持って今の仕事をしているのかはわからないが。
というわけで、今回は、当初連休中のことを書こうと思ったが、やめて「弁理士になって変わったこと」について徒然に書くことにした。
以前別な特許事務所に勤務する同期合格の方に、Facebook上で「弁理士になって何が変わりましたか?」と聞かれ、私は以下のように答えた。
1.給料が増えた
2.メルアドと名刺が変わった
3.審判であれば(代理権がなくても)電話応対できるようになった
4.面倒な仕事が増えた
1については、現在の職場では、弁理士資格手当としていくらかもらえることになっている。残業代はなくなったが、その代わりにこれまでの残業実績に基づく超過勤務手当がつくので、合計としては給料が上がった。具体的な額についてここでは書かないが、この増分が、弁理士試験突破の動機付けとなるかは、人によるだろう。
2はまぁ些末なこと。名刺に「弁理士」という肩書きがつき、職場のメルアドには、外国人にもわかるように弁理士であることがわかるようになった。ただ対外的にも認められるようになったと実感できた。あとついでに書くと現在の職場の受付には、弁理士の名前が刻まれた銀プレートが掲げられていて、ここに私の名前が追加されたときには、「おぉ」と思った。
3もどうでもいいことだと思う人がいるかもしれない。ただ特許庁審査官/審判官との技術面談は弁理士の専権業務である(弁理士法4条1項、75条)。非公式なやり取りであるとはいえ審尋回答書の内容に関して審判長から直接問い合わせの電話が来て、それに応対したときに「一人前になった」と思ったものである。
4は、具体的には、中途受任の中間処理(しかも拒絶査定+補正却下、審尋の段階)が激増した。想像していただきたいが、自分で発明者と面談したわけでもない事件で、拒絶査定不服審判(121条)を請求したいから審判請求書(131条)を作れと言われたらどうするだろうか? i)まず出願時の明細書を読んで発明内容を理解し、ii)その後拒絶理由通知を読んでなぜ本出願が拒絶されたのかを理解し、iii)次に前の代理人がどのような手続を行ったのかを理解し、iv)最後にその手続ではなぜ拒絶理由が解消されなかったのかを理解しなければならない。ここまでやってようやく審判請求書の論点を抽出できるのである。
しかも(これは愚痴だが)中間処理は通常件数毎の売り上げで要した時間で費用請求できない。そうすると上記1~4をできるだけ速く行う必要がある。しかし速くても重要な論点を落としたり(項目落ち)しては「代理人失格」である。といったわけで速く処理しなければならないが、しっかり検討もしなくてはならないというわけで、弁理士の腕の見せ所といえばそうかもしれないが、結構キツい。
あと上記返答の後、いくつか気づいたことがあったのでそれについても今回書いておく。
5.(今の職場を追われても)「どうにかなる」と思えるようになった
6.アルバイトできるようになった
7.交友関係が広がった
5は実は自分にとって一番重要。今の職場で働き続けるつもりにしても、「今の職場辞めたら路頭に迷う」と思って働くのと「今の職場を辞めてもどうにかなる」と思って働くのとでは、精神的な負担がまるで違う。このような精神的なゆとりを得て働けるようになったことは(実際の仕事がキツくても)一番大きい。
6もそれほど重要なことではないが、交際費(という名の飲み代)を捻出する上では非常に重要。ちなみにこれまでのアルバイト代で受験機関に投資したお金は回収できた。
7は、弁理士同士わかり合える部分が多いようで、わりとすぐに打ち解けることができる。ただ弁理士はお金持っている人が多いですから交際費は結構かかるかも(実際私はときどき飲み会の誘いを断っている)。
とまぁこんな感じで「弁理士登録後」のことを酔った勢いに任せて色々書いてみた。受験生の皆さんの参考になればと思います。
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