弁理士にできること
受験生時代、なぜ拒絶査定不服審判(特許法121条)の請求が所謂不利益行為に該当する(同9条)のかがわからなかった。放置すると拒絶査定が確定してしまうのだから、拒絶査定不服審判の請求は所謂保存行為なのではないか、と考えていたのである。
このような疑問を元知財高裁判事である職場の相談役にぶつけてみた。氏の答えは明解だった。「代理人を選ぶ権利を保証するためだよ。不適切な代理行為で拒絶査定になったのにその代理人に審判請求を代理してもらってもしょうがないだろ?」 私の疑問はあっけなく解決した。
ところで、「代理人を選ぶ」基準とは何だろうか? こんなことをふと考えた。
出願人は特許権を取得したいのだから、特許査定率の高い代理人なのだろうか? しかし特許権が得られれば何でも良い訳ではないだろう。特許権は有効な権利範囲を有していなければ意味がないからである。第一特許査定率で決まるという考え方は、代理人である弁理士を特許請負人と看做す考え方で、恐ろしくて仕事を受けられないという弁理士がほとんどだろう。
特許出願人は、自己の特許出願に係る発明が特許査定されることで、特許権を取得できることを望んでいる。しかし望んでいても必ず特許権を取得できる訳ではないことも知っている(はずである)。
ということは、代理人の評価は手続代理行為による行政処分以外で決まることになる。
では一体何で「代理人を選ぶ」基準は決まるのだろうか? つまり仮に代理した出願が拒絶査定(審決)を受けても「この代理人を選んで良かった」と思ってもらえる為に代理人が備えているべき資質とは何だろうか?
それは、特許出願等に始まる一連の手続から特許査定等の行政処分を得るまでの過程の透明さではないだろうか。
たとえば、ある特許出願が29条2項違反の拒絶理由を通知されたとしよう。そのとき、出願人である貴方の顧客は補正すると特許請求の範囲に係る発明の技術的範囲が狭くなるので、できれば補正せずに応答することを希望した。しかし代理人である貴方は補正しなければ拒絶理由は解消できないと考えた。
どうすればよいのだろうか?
特許権を取得することが第一の目的であるならば、出願人の希望は愚かなので考えを改めるよう説得すべきなのだろうか? あるいは顧客は事態をよく理解していないのだからこれ以上希望を聞くのは止めて、顧客から「白紙委任」してもらった上で「特許権を取得する」ために自分の考える最善の手続をとるべきなのだろうか?
どちらも違うと思う。
代理というのは、他の人に手続を依頼することであるが、あくまで出願に始まる一連の行政(特許庁)に対する申立てに対して依頼主である出願人の意図を反映させなければならない。
だから、上記の件であれば、補正しなければ29条2項で拒絶査定されるリスクを負うことを知らせた上で、出願人の判断を待つべきなのである。このとき、なぜ補正しなければ29条2項で拒絶査定されるのかは、代理人のこれまでの経験等が大きく関係するが、代理人である弁理士の特許法等の知識や技術分野に関する知見は、このように出願人の自主的な意思決定に寄与する為に利用されるべきなのである。
弁理士にできること。それは、各弁理士がこれまで習得してきた特許法等の知識や技術分野の知見を、出願人である顧客に開示することで、出願人が納得行くような判断のサポートをすることである。
これは当たり前のことかもしれないが、日々期限に追われる仕事をしていると忘れがちなので、この弁理士の日に書いてみた。
このような疑問を元知財高裁判事である職場の相談役にぶつけてみた。氏の答えは明解だった。「代理人を選ぶ権利を保証するためだよ。不適切な代理行為で拒絶査定になったのにその代理人に審判請求を代理してもらってもしょうがないだろ?」 私の疑問はあっけなく解決した。
ところで、「代理人を選ぶ」基準とは何だろうか? こんなことをふと考えた。
出願人は特許権を取得したいのだから、特許査定率の高い代理人なのだろうか? しかし特許権が得られれば何でも良い訳ではないだろう。特許権は有効な権利範囲を有していなければ意味がないからである。第一特許査定率で決まるという考え方は、代理人である弁理士を特許請負人と看做す考え方で、恐ろしくて仕事を受けられないという弁理士がほとんどだろう。
特許出願人は、自己の特許出願に係る発明が特許査定されることで、特許権を取得できることを望んでいる。しかし望んでいても必ず特許権を取得できる訳ではないことも知っている(はずである)。
ということは、代理人の評価は手続代理行為による行政処分以外で決まることになる。
では一体何で「代理人を選ぶ」基準は決まるのだろうか? つまり仮に代理した出願が拒絶査定(審決)を受けても「この代理人を選んで良かった」と思ってもらえる為に代理人が備えているべき資質とは何だろうか?
それは、特許出願等に始まる一連の手続から特許査定等の行政処分を得るまでの過程の透明さではないだろうか。
たとえば、ある特許出願が29条2項違反の拒絶理由を通知されたとしよう。そのとき、出願人である貴方の顧客は補正すると特許請求の範囲に係る発明の技術的範囲が狭くなるので、できれば補正せずに応答することを希望した。しかし代理人である貴方は補正しなければ拒絶理由は解消できないと考えた。
どうすればよいのだろうか?
特許権を取得することが第一の目的であるならば、出願人の希望は愚かなので考えを改めるよう説得すべきなのだろうか? あるいは顧客は事態をよく理解していないのだからこれ以上希望を聞くのは止めて、顧客から「白紙委任」してもらった上で「特許権を取得する」ために自分の考える最善の手続をとるべきなのだろうか?
どちらも違うと思う。
代理というのは、他の人に手続を依頼することであるが、あくまで出願に始まる一連の行政(特許庁)に対する申立てに対して依頼主である出願人の意図を反映させなければならない。
だから、上記の件であれば、補正しなければ29条2項で拒絶査定されるリスクを負うことを知らせた上で、出願人の判断を待つべきなのである。このとき、なぜ補正しなければ29条2項で拒絶査定されるのかは、代理人のこれまでの経験等が大きく関係するが、代理人である弁理士の特許法等の知識や技術分野に関する知見は、このように出願人の自主的な意思決定に寄与する為に利用されるべきなのである。
弁理士にできること。それは、各弁理士がこれまで習得してきた特許法等の知識や技術分野の知見を、出願人である顧客に開示することで、出願人が納得行くような判断のサポートをすることである。
これは当たり前のことかもしれないが、日々期限に追われる仕事をしていると忘れがちなので、この弁理士の日に書いてみた。
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